ニュース記事概要
東京の都立高校の約6割が、生徒が髪の毛を染めたりパーマをかけたりしていないか、生まれつきの髪かを見分けるため、一部の生徒から入学時に「地毛証明書」を提出させていることがわかった。勘違いによる指導を防ぐ狙いがあるが、裏付けのために幼児期の写真を出させる例もあり、専門家から疑問視する声もある。
(全173都立高校のうち170高アンケートに回答:朝日新聞調べ)
https://www.asahi.com/articles/ASK4P4TZ6K4PUTIL01Q.html
(1)相反する2つ以上の意見
<賛成>
高校生(女性)
「地毛証明書ってね、私みたいな天然パーマの人にとっては逆に助かるんだよ。
中学では先生にめっちゃ疑われたし、ムダに説教されたもん。
そのたび親が電話で説明したりして、ホントに嫌だった。
こんな証明書1枚で自分が守れるって考えたら、ないより全然いいと思う」
ある都立高の副校長
「生徒に地毛を大切にするよう呼びかけているので、証明書が必要だ」
高校教師(50代男性)
「うーん、地毛証明書があると、僕たち教師がラクなんですよね。
校則がある以上、守っていない生徒には指導をしなくちゃならないでしょ。
でも最近、いろんな親がいるわけですよ。
うかつなこと言うと「ウチの子は生まれつきの天然パーマです!先生の指導は人権侵害だ!!」なんて言われちゃうからね。
地毛証明で守られてるのは教師 、という面は否めないです」
「頭髪指導をする中で、(地毛が茶色い生徒らに)間違った指導をしないために行われている」
写真を添付させることについては、「個別状況で真に必要な場合に限られるべきだ」
<反対>
高校生の父(50代男性)
「娘を見ているとわかるのですが、もう高校生、世界は学校だけではありません。
自分でさまざまなコミュニティを見つけて飛び込み、次々と人間関係を作っています。
それは娘の私生活であり、よほどのことがない限り親でも制限できません。
それなのに、学校が髪型を制限する権利が果たしてあるのでしょうか。
“私生活の自由”まで奪おうとする 地毛証明書には、断固反対です」
小学生の母(30代女性)
「高校1年生って、16歳ですよ。髪型なんか自由にさせればいいじゃないですか。
そのかわり、何か不利益を被っても自己責任。
自由には責任がつきもの であることを、若いうちから教えていくべきです」
「身体について証明書を出させるなんて明らかな人権侵害だ」
「大人は、子どもをケアしつつ人格を尊重するという、対等の関係を目指すべきだ。これは上からの一方的な押しつけだ」
「生徒の人権を守るためと言うが、出自やアイデンティティーの証明を求めることが人権侵害だとなぜわからないのか」
「形式的には筋が通っていても、全体として個性や多様性をすごく抑圧している。まず髪を染めた人が不良、不真面目という認識モデルを疑うべきだ」
<法律的視点>
エジソン法律事務所の大達一賢弁護士の意見
「“合法性”という意味においては違法とまではいえないのだろうと思われます。
その理由として、まずおおもとに、「国公立である、私立であるを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設であり、法律に格別の規定がない場合でも、その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによって在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである」と判断をした判例があります(※1)。」
※1:最高裁判所 昭和49年7月19日判決
「これに追従するような形で、小中高校においても学校の学則制定における包括的権能を認めている下級審判決が多く存在します。
例えば、ある判決(※2)は、「生徒の服装等について規律する校則が中学校における教育に関連して定められたもの、すなわち、教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、右校則は違法とはならない」としており、男子の髪型について「丸刈」と規定していた校則は憲法に違反せず、また違法性も認められず、校長の裁量権の範囲内と判断しています。
そのため、現在の都立高校における頭髪に関する校則も違法であるとはされない可能性は高いといえるでしょう。また、校則が適法だとしても、校則を遵守させるための手段が適法である必要があります。」※2:熊本地方裁判所 昭和60年11月13日判決
<その他気になった点>
・いつから地毛証明書はあるのか?
→1980年代に不良=茶髪・金髪というイメージが確立されたように思われる。
この年代あたりから校内暴力がテーマのドラマが放送されている。
1980年 中学校を舞台にしたテレビドラマ『3年B組金八先生』
1984年 高校を舞台にしたテレビドラマ『スクール☆ウォーズ』
校内暴力を抑制するために、不良を取り締まる校則が強化され
その一環として「地毛証明書」が誕生したのではないか。
・外国人から見たら日本人が黒髪を染めるというのはどう見えるのか?
<染めることに反対>
(モロッコ/30代前半/男性)
「母国では日本みたいに頻繁に髪を染めません。日本人女性の黒い髪に憧れている外国人が多いのに、染めてしまうともったいない気がします」
(ブラジル/40代前半/男性)
「自然の黒髪がいいと思います。日本人には茶髪や金髪が似合わないと思います。男性が髪を染めるのもおかしいと思います。母国には様々な人種がいますし、自然に茶髪・金髪の人もいます。黒髪の白人が金髪に染めても綺麗な人がたくさんいます」
(ポーランド/40代前半/女性)
「ポーランドでは皆が日本人の黒髪に憧れています。みな髪の毛が細くて、茶色や金髪が多いからです。日本人が黒い髪を染めてしまうのが残念です。もったいないです」
<染めることに賛成>
(タイ/30代前半/女性)
「別にいいと思う。タイも変わらない」
(イタリア/30代前半/男性)
「イタリアではもっと自由に染めている気がします。元々茶髪・金髪・黒髪・赤髪も自然にあるからか、日本みたいに『黒髪がベスト』のようなイメージがありません」
(アメリカ/20代後半/男性)
「アメリカでは、いろんな髪型と色があります。髪の色で就職できないとかはありません」
参照URL:
https://www.asahi.com/articles/ASK815T7FK81UTIL04X.html
https://woman.excite.co.jp/article/child/rid_Papimami_105746/
https://lmedia.jp/2017/06/10/79675/
http://yuru-ku.com/2017/05/20/natural-blond-hair-certificate/
http://sii-aoyama.com/blog/%E3%83%98%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%A9%B1%E3%80%82/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%A1%E5%86%85%E6%9A%B4%E5%8A%9B
https://news.mynavi.jp/article/20170331-a052/
(2)仮説
<地毛証明書が作成されるプロセス>
1.高校生のある生徒が茶髪・金髪・パーマにする。
動機:黒髪はダサい。異性にもてたい。目立ちたい。茶髪・金髪・パーマはカッコイイ
↓
2.教師が高校生に茶髪・金髪・パーマを注意する。
動機:教育委員会、校長・教頭からの指示。教師としての役割の遂行。
あるいは自己の信念から。
↓
3.高校生は教師の言うことを聞かない、従わない。
動機:教師の話を聞くことにメリットを感じないから。
↓
4.高校生の保護者に注意を促すも、保護者も教師の言うこを聞かない、従わない。
動機:教師の話を聞くことにメリットを感じないから。
↓
5.教師は教育指導のために地毛証明書を提出させる。場合によっては幼少期の写真を添えて。
動機:教師の話を聞かない生徒・保護者と、教育指導をしろという上からの指示の
板挟みにあい、その苦肉の策として地毛証明書を提出させている。
「決まりですので」と言えば親に説明がし易い。
地毛証明書を保護者が提出しなければ、保護者が悪いということで
上にも説明できる。
↓
6.本当に茶髪・金髪・パーマの学生の一部は、地毛証明書を求められ嫌な思いをする。
あるいは、周囲の勝手な誤解説明の手間が省けてせいせいしている。
上記<地毛証明書が作成されるプロセス>の3と4
高校生と保護者がなぜ教師の言うことを聞かない、従わないのか考えてみる。
教育は、消費活動であると日本人は勘違いしてしまったからではないだろうか。
RPGゲームで例えると、敵モンスターを倒せば必ず経験値が貰え
費やした時間に比例してすぐにレベルが上がっていくことです。
これと同じモデルで教育を考える生徒・保護者が大多数になってしまった。
90分の授業で私は、私の子どもはどれくらい学力が上がるのか。
先生の話を聞くことにどのくらいメリットがあるのか?値踏みするのが普通になったしまった。
そして、メリットがなければ聞かないよという思考パターンになっているから教師の言うことを生徒・保護者は聞かなくなったのではなかいか。
参考文献:下流志向 著者:内田樹 出版:講談社 (2007年)
(3)中立な立場で提案する
上記<地毛証明書の生成のプロセス>の「1.高校生のある生徒が茶髪・金髪・パーマにする。」を未然に防ぐことを攻めどころとします。
理由は他の2~4は日本人の社会常識を変えることになるので効果的な策が出しにくいですが、高校生の常識ならば変えられるのではないかと感じたかたです。
提案:金髪・茶髪・パーマの外国人留学生と髪の色について英語で、ディスカッションをする授業を設ける。
日本人の黒髪は世界的に見るとダサくない、むしろカッコイイというイメージを学生に持ってもらうような授業を都立高校で企画してはどうでしょうか。
また、黒髪でない人に対して偏見を持っていたことを学生に認識してもらいます。
(狙いは地毛が黒髪でない生徒への理解を持ってもらうため。)
その上で、そのディスカッションのレポートを生徒に書いてもらい、
それを保護者に提出、コメントを書いて提出してもらいます。
これにより、地毛証明書を提出する高校生が減るのではないでしょうか。
また、髪の色と生徒の中身は関係ないことに対する理解のある保護者が増えることを狙いとします。