【読書#96】サル化する世界

タイトル:サル化する世界

著者:内田 樹

出版:文藝春秋

<著者の言いたいこと(200文字以内)>

今の日本社会は「成熟する」ということが

「複雑化」することだということを認めていない。

逆に成熟することとは「定型に収まって、それ以上変化しなくなること」

だと思って、そう教えている。

アクターのふるまいが絶えず変化すると、システムの制御が難しくなる。

だから、システムの管理コストを最小化するために、

人間たちは「成熟するな」という命令が下されている。

「自分の身のほど」なんか知らなくてもいいんじゃなかろうか。

<今後に活かす(100文字以内)>

「経営判断の適否を判断するのは従業員ではなく、マーケットである。

社内で合意が得られなくても、マーケットが経営判断を支持して、

商品が売れ株価が上がるなら経営者は正しかったことになる」

ということに気づく。

<その他 気になった言葉>

・ それはわれわれの家庭も、学校も、企業も、

どこにも民主的な合意形成で運営されている組織なんか存在しないからです。

・成員全員の合意を取りつける努力を怠る組織は、

うまく回っているときはいいけれど、

いったん失敗したときに復元力がない。

・民主主義は国が好調であるときにはきわめて非効率的なものに見えますが、

国難的危機のときには強い復元力を持ちます。

・彼が目指している「改憲」なるものは要するに単なる

「非民主化」のことである。

・彼らが簡単に記事を撤回できる理由はある意味簡単である。

それはそれが「職を賭しても言いたい」ことではなかったからである。

・「今ここでは何をしても誰にも咎められることがない」

とわかったときに、人がどれほど利己的になるか、

どれほど残酷になれるか、どれほど卑劣になれるか、

私は経験的に知っている。

そして、そういう局面でどうふるまったかを私は忘れない。

それがその人間の「正味」の人間性だと思うからである。

・そして、彼らがどれほど「ひどい人間」に変貌するかは、

平時においてはまずわからないのである。

・アメリカに対してどれほど従属的であるかが日本では

ドメスティックな格付けのほぼ唯一の査定基準である。

・「計量的知性」

どうふるまうか決定し難い難問を前にしたときは、

そのつど、ゼロから根源的に吟味する知的な態度のことを指して

カミュはこの言葉を選んだ。

・カミュが定式化した原則は

「自分が殺されることを覚悟している人間は人を殺すことができる」

というものだった。

・ことの適否はつねに「それによって人間社会がよい住みやすいものになるかどうか」によってなされるべきだと私は思っている。

・「制度がある限り、ルールに沿って制度は粛々と運用されるべき」

だという形式的な議論に私は説得されない。

それは「そもそもどうしてこの制度があるのか」

という根源的な問いのために知的リソースを割く気のない人間の

言い訳に過ぎないからだ。

・デモクラシーの定義:敵と共生する、反対者とともに統治する

・「公人」というのは自分を支持する人も、

自分を支持しない人も含めて自分が属する組織の全体の利害を

代表する人間のことです。

・統治者はしばしば失敗するということを織り込み済みで、

そこから復元するシステムを持っている国では、

どちらが長期的にはリスクを回避できるか。

考えるまでもありません。

・失敗したときに、どこで自分が間違ったのかを

すぐに理解し、正しい解との分岐点にまで立ち戻れる力のことです。

・わかりやすいストーリーラインに落とし込むという

誘惑にできる限り抵抗する。

・修行というのは、毎日淡々と、呼吸をするように、

食事をしたり、眠ったりするのと同じように、自然に、

エンドレスに行うことが肝要なのです。

だから修行に目標というものがありません。

・市場原理に委ねるとある種の領域で制度は

限りなく劣化するという平明な事実を

直視するべきなんです。

・教育する主体は集団なのです。そして、

教育の受益者も集団です。

・教育事業の究極の目的が「われわれの共同体の存続」

をめざすものだからです。

・言語は政治的なものです。

・金で幸福は買えないが、金で不幸は追い払える

・にこにこ機嫌よくしていないと危機は生き延びられません。

・不機嫌なとき、悲しいとき、怒っているときには

絶対に重大な決断を下してはいけない。

・これから日本が直面する最大の社会的な難問は

この大量の「幼児的な老人たち」がそれなりに

自尊感情を維持しながら、愉快な生活を送ってもらうために

どうすればいいのかということですね。

これは国家的な課題といって過言ではないと思います。

ー気が遠くなるようなタスクですね。

・基本的に育児は個人でできるものじゃないし、

すべきでもないと思います。

・弱者ベースで制度設計をする。

・私人の贈与によって成立した公共が、

まるで自分が世界を創り出したかのような大きな顔をしている。

・グローバル企業は、合理化を貫徹したせいで国内で

雇用崩壊が起きることにを気にかけていません。

国内に購買力がなくなったら、そのときは海外市場に打って出ればいい、

そう考えている。

・自分の判断力が高まるのは、「好きなことをしているとき」なんです。

「自分は本当は何をしたいのか?」をいつも考えている人は

「これはやりたくない」ということに対する感度が上がります。

・自分の生きる力を高めるものだけを選択し、

自分の生きる力を損なうものを回避する、

そういうプリミティブな能力を高めることがこの前代未聞の局面を

生き延びるために一番大切なことだと僕は思います。

・だから、今の日本の政策は基本的に「アメリカの国益が最大化する」

ことを目標に起案されているんです。

・シラバスというのは工業製品の仕様書なんです。

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