【ニュース #85】「カルロス・ゴーン氏は無実だ」ある会計人の重大指摘

ニュース記事概要

仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務していたカルロス・ゴーン氏は、
役員報酬が実際には99億9800万円であったところ、
これを49億8700万円として虚偽の有価証券報告書を5回にわたり関東財務局に提出したのが金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載罪)に問われている。
ゴーン前会長は巨額の経済的便益を日産自動車から受けていたのであろう。
しかし、巨額の経済的便益を受けていたことと有価証券報告書虚偽記載罪は何の関係もない。

(1)相反する2つ以上の意見

細野 祐二(公認会計士)

問題は費用処理の勘定科目が役員報酬となっていたかどうかで、この時代のSRSは税務上損金算入が認められていなかったので、役員報酬ではなく「交際費」と処理された可能性が高く、そうであれば、交際費でも役員報酬として開示しなければならないというヤヤコシイ会計基準を、ゴーン社長が認識していたかどうかにある(ゴーン前会長が日本の連結財務諸表規則や開示内閣府令などを知っているはずがない)。

家族旅行の費用を日産に付けていたという報道は、論じることさえ馬鹿馬鹿しい。

大手企業では役員に対して様々な待遇が設けられ、家族でも使えるものもある。だからといってこれが役員報酬だと言い張る会計人は世界のどこにも存在しない。

小笠原泰(明治大学国際日本学部教授、フランス・トゥールーズ第一大学客員教授)

「取締役会がゴーン容疑者の解任を見送ったのは、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の意向に配慮したためとみられ」と報じたが、これはまったくの憶測である。ルノーの判断の背後にあるのは、ルメール経済・財務相も述べているが、推定無罪の原則である。推定無罪とは「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則だが、日本ではまったく機能していない。逮捕された人物は犯罪者とみなされる。この推定無罪が機能しない状態は、他の先進国からみると極めて異様、前近代的である。

日経新聞(11月21日の社説)

日本の企業トップの犯罪は私利私欲によるものは少なく、かつての山一証券が典型だが、組織の体面や存続を優先するあまり、過去の損失を隠蔽するなど一線を越えてしまうケースが多かった。

一方、米欧では粉飾決算の末に破綻した米エンロンのように、経営者の「私腹を肥やす」型の不正が目立つ。ゴーン会長の容疑は後者の系譜に属するだろう。

朝日新聞(11月22日)

ゴーン会長は逮捕容疑の対象となった5年間に年間約20億円の報酬を受け取ったとされる。それでも米大企業の役員とほぼ同水準か、やや少ない程度だ。…

日本企業の場合、従業員が内部昇格する「サラリーマン社長」が一般的だが、米大企業は経営手腕に優れた外部人材を競うように雇う。東京商工リサーチの坂田芳博氏は「グローバルな人材を確保しようとすればどうしても報酬は高額になる」と指摘する。

https://biz-journal.jp/2018/11/post_25697.html

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58668?page=2

https://www.asahi.com/articles/DA3S13779613.html

(2)仮説(450文字以内)

・サラリーマンとサラリーマン経営者が多い日本では

その対価が妥当だと想像することができないのではないか。

大企業の舵取りとなると、一つの判断が莫大な損失になる。

グローバル化した現在、その判断ができるという能力には

法外に思える対価が払われる。

・東京地検特捜部は大きな手柄を挙げて威信回復を図りたかった。

また、日産幹部は、経営権の変更を願った。

この二つの利害が一致して今回の逮捕となったのではないか。

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